軽井沢の、石の教会 内村鑑三記念堂。

この美しい道に設置するアイテムを作らせていただけることになり、丸々1ヶ月ほど、真鍮と向き合っておりました。

 

丁寧に積まれた石と、心地よい木漏れ日と緑の世界にそぐうもの。

かつ昼夜問わず視認性があるポールとロープを作る。

石の中に置いて似合うポール。木材でも、金属でも選択肢はいろいろあったのですが、
建築から数十年の時を重ねた割石や、苔や、四季によって移り変わる木々などの景色。
緑の中でも緑のない季節でも、真っ白な季節でも違和感のないもの。

ということで、さまざまな素材を検討しましたが今回は「古びた真鍮」を使うことになりました。
これ以上の素材はこの場所では考えられませんでした。

 

ということで、今回は真鍮作家の橋本忍くん「ningulu」にお力をお借りしました。写真は忍くんの展示の一コマ。
忍くんの作品は、いつでも穏やかな自然の何かを感じることができます。忍くんの作品は、いつでも穏やかな自然の何かを感じることができます。

 

忍くんの作品は、主に真鍮を使った作品ですが、風や、ゆらぎ、といった自然を感じる風合いや動きの表現が素敵です。

今回は真鍮の切り出し、叩き加工などをお願いしました。

丸は丸でもレーザーで真円に切るよりも、ハサミで手で切った微妙な形の方が、やはり温かみがあるというか、柔らかさがあります。

 

 

 

真鍮のポールなどは、メーカー品なのですが、特注で、クリア加工などをしていない、ポリッシュもしない真鍮無垢の状態で出荷をしていただき、弊社で自然の中に溶け込む風合いになるようにエイジングを施しました。

加工前と、加工後

 

あの空間の、石や、樹木にピカピカの真鍮、というのも少し浮いてしまいそうでエイジングをすることになりましたが、

いい感じに古びている、というのは、汚いわけではなく、また、今回作った8本が同じような色合いに揃える必要があります。

昨年からいろんな素材を使って真鍮をエイジングをしていますが、同じ温度、同じ濃度の同じ素材を使っても、なかなか揃えるのは難しいです。

薬剤が強すぎると、青くなってしまったり、下処理に時間をかけないと風合いが出なかったり。

 

 

写真が少ししか残っていなかったのですが、これはエイジング途中の風合いを出している段階ですね。

 

 

この段階を踏まないと、好みの味、ムラが出ません。

この後色に深みを出していきます。

 

 

8本同時にできればいいのですが、一つ一つ変化を見極めるタイミングが本当に微妙なので、結局一本づつ行いました。

薬剤をよく洗い流して乾燥させて一晩置くと、また少し色が変わるんです。

ということで一日一本、くらいの製作ペースになりました。

もちろん最後はこれ以上色を変化させないための腐食どめを行います。

8本全部を同じように作るのはなかなか繊細な作業でした。

 

 

手間をかけたおかげもあり、現場にはとてもよくマッチしたのではないかと思います。

 

他にも、軽井沢高原教会の林の中に合うポール、ということで、コナラの木と鉄、染め上げた紐などを使ったアイテムも製作しました。

ここらへんの、染め物も、昨年随分と経験を積みましたので、慣れたものです。

慣れた、とはいえ、まだまだやり方を確立し、いくらかの数をこなしたという程度のものです。

今回は屋外で、かつ常設で使うロープですし、取り付けたり、外したり、移動をしたり、という使い勝手も重要です。

 

紐は、雨に当たる(濡れる)と縮むのです。これは昨年初めて知りました。

これを考慮してのロープ選びが必要になります。もちろんナイロンなどのロープであれば縮まないのですが、染めたり風合いを出したりすることはできません。逆に風合いがとてもよい麻などは、水に濡れると10%も縮みます。
10%も縮んでしまうと、固定式のポールに取り付けるロープとしての機能は難しいです。

 

 

ということで乾燥した状態と、濡れた状態での計測を行い、その上で編み込んで、染めてみて、というふうにテストを繰り返します。
乾燥している時に長さ2Mの部分に黒い針金を巻いて、水に漬け込んで濡らして、脱水機にかけた直後の計測です。

一番縮む麻は20センチ近く縮み、白いロープは3センチだけ縮みました。
今回はこの白いロープを使いました。

編み込みは50センチで何コマ、という基準を作り、固すぎず、緩すぎず、のちょうど良いところを狙います。

今回は伸び縮みが極力少なくて、天然素材の様に見える、化繊が混ざったロープにしたので、染めもなかなか狙った色に染まらずでしたが、いろいろ調合を試して、最終的に「当たり前に自然に溶け込んでいる色」に染め上がりました。もちろん色留め加工もしてあります。

というふうに、屋外で、常設で使う、というアイテムに対してはとにかくテストの繰り返しです。

 

 

 

ちょっとしたアイテムですが、景色に溶け込む良い感じに仕上がりました。

キャンドル屋から始まった弊社ですが、随分作るものの幅が広がったなと実感します。

 

 

軽井沢  石の教会 内村鑑三記念堂  オフィシャルHP

 

 

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3D パンプキン制作 ハロウィン