軽井沢高原教会の冬の屋外装飾を担当させていただきました。

森の中の四阿の中の装飾や、人工降雪機で真っ白な世界になった林の遊歩道を囲むロープなど、雪の世界に溶け込む白づくしの製作となりました。イベント、というわけではありませんが、冬のウェディングの写真撮影などにも使われています。

今回は夜の演出ではなく、昼がメインとなりますので、雪の世界に溶け込むように自然素材を多用しています。

デザインを開始してから、設営、お披露目まで一年以上という、弊社としても最長のプロジェクトになりました。

パース画

架空の世界の創生になりますので、材料選びにも色々とこだわりました。
シンボルツリーの幹になる流木を集め、細かな枝となる白樺を集め、葉っぱになる造花選びもテストを繰り返しました。

そもそも冬の表現というだけであれば、葉っぱは不要なのですが、そこは架空の白い世界ですので、実際の樹木よりも濃い密度で様々な葉っぱをつけました。ところどころ半透明の貝殻なども使っています。

白ければ良いのか、というわけでもなく、市販されている白く着色された造花などでは深みや生き物感が全く出ないので、今回は造花をあえて一旦、黒っぽい色に染めてから艶消しの白色に着色し直す、といった非常に手間のかかる方法になりました。

造花の本数は800本程度。造花と白樺の枝に塗った塗料だけで55キロ。
もちろん一本一本手塗りです。

何が何本いるのか、という計算をしないと資材が足りなかったり無駄になってしまったりするので、もちろん事前に計算をしています。
とはいえ、塗料は想定よりも5割増で、買い足すことになりました。

今回は、流木や枝などの組み合わせですので、現場でスパッと組めるように、本数を考えたり、角度を考えたり、仮組みをしてみたり、色々とシミュレーションをしました。

枝に葉っぱをつける作業も、やっぱり雰囲気を作るところなので、枝のどの部分にこういう葉っぱが付いて、枝全体のフォルムはこんな感じで、と見本の現物を作って、図を描いて、文字で書いて、とやってもやはりいくつかイマイチな雰囲気になってしまったものは容赦なくやり直しました。とにかく丁寧に、1人1日一本が目標でした。大小含めて40本分くらい作りましたね。この頃は寒かったですね。

できたものは潰れないように収納。

 

背面のパネルは白樺の皮を1500枚貼りました。

貼りました、と言ってしまえば簡単なのですが、
天然素材ですので破れてれているものや穴があいているものを省いて、
皮の裏を貼り付けやすいように削って平面に慣らして、
丸まった皮を油を塗って柔らかくして、
プレスして板状に整形して、
違和感のないようにスプレーで着色。
着色も全部同じ色にならないように色々工夫して、
やっと貼り付けです。貼り付けも簡単ではなかったです。
結局、毎日のように貼り続け、3ヶ月くらいかかりました。

言葉で書いてしまえば「白い壁」と地味ですが、結構大作です。

 

遊歩道のロープとポール。

 

形状、太さ、高さ、素材、色、質感と、色々とテスト、吟味をしました。
雪の中にあう天然物。

160本のロープは手編みで、染めも一本一本染めました。これも2ヶ月くらいかかりました。
網目の雰囲気が揃うようにと基準を決めて、キツすぎずユルすぎずのちょうど良いところを狙いました。
色々やった結果、基準を数値化して安定した網目を作ることになりました。

ロープの先端の真鍮のリングも、ロープの色に合わせてエイジングさせました。
均一じゃない感じ、汚くない感じのちょうどいいところを目指し、試行錯誤をしました。
最終的に、2種類の薬剤による変色の組み合わせになりました。

ポールの鉄の部分は、まさかの手曲げです。
機械曲げの方が均一な円になるのはわかってはいるのですが、あんまり図形のような円は、自然の中には合わないだろうと、あえての手曲げです。

塗装は強度抜群のメラミン焼き付け塗装のつや消しです。

白樺のセンターの貫通穴は、歪みのある自然素材であることと、50センチという長さ故、旋盤やボール盤での加工も難しく、あれこれ治具などを作って試してみたのですが、結局ハンドドリルでフリーハンドの穴あけになりました。これはほぼ修行に近い作業だったと思います。ドリルのジョイント部分などもいくつも金属疲労で壊れましたし、手首も壊れそうになるので1日10本が限界でした。多分この作業をお願いしてやってくださる業者さんはそういないでしょう。今回でだいぶスキルが上がりまして、もっと硬い素材での90センチの貫通穴もほぼ真っ直ぐ開けられるようになりました。このスキル、どこで活かしましょうかね。

160本全て穴が空いたときには感動がありました。

他にも、細かい苦労話などがありますが、写真がないので今回は触れません。

後で後悔するのが嫌だからと、これでもかとこだわり続けた1年間でした。
こだわった理由の一つに、目指せ日本一の冬のウェディング、というテーマを自分に課したからです。
おかげで、満足のいく仕上がりになりました。

製作に関わってくださった皆さまには感謝でいっぱいです。

お疲れ様でした。
ありがとうございました。

軽井沢高原教会 オフィシャルHP
https://www.karuizawachurch.org

造作の過去記事

軽井沢高原教会100周年 サマーキャンドルナイト