沖縄宮古島の離島の来間島のシーウッドホテルで冬の間の光の演出を制作させていただきました。

「スターライトイルミネーション 星影と水面の光景 ~煌めく夜空の物語~」
と題したこの企画は通常のイルミネーションとは異なり、夜空に輝く星々をテーマにしています。

写真はシーウッドホテル公式 HPより引用



設置と同時期に、環境省が12月に発表した【2024年夏の星空観察】において、宮古島市は最高等級の21等級にランクされ、天の川の複雑な構造が確認でき、星団などの観測ができる場所として、認定されました。

シーウッドホテルはこの来間島を星の聖地として捉え、年間開催している星空観測ツアーや、ホテル敷地内に天文台も建設中であったりなど、夜空の魅力を伝えています。北緯24度という位置からは南十字星やカノープスを見ることも可能で、天の川中心部もより高く見ることができます。

写真はシーウッドホテル公式 HPより引用


海で遊び、空で学ぶホテル

このようなシーウッドホテルの空にかける想いを、イルミネーションとして全天にある88星座と、惑星をイメージしています。

星座の歴史は古く、コペルニクスやアリストテレスなどが空を見る遥か昔の5000年前から、その星々の形に名前をつけていたようです。
通常日本からは見える星座は60ほどですが、南半球を含めた地球全体から見える星座が88あります。

これら全ての星座をランタンに見立てています。
88星座の中でも占星術などで馴染みの深い黄道12星座は特に大きなランタンを使い強調しました。



ランタンのガラス面に、星座のイメージと、それを形どる主要な星々をデザインしています。
これらの星座のデータ作りは、どこかで入手したデータをポン、というわけではなく、弊社なりに考えた図柄のわかりやすさとリアルさのバランス、1等星などの星の大きさや繋ぐ線などにもこだわり、4人体制で1週間程度を要しました。

ランタンの並べ方も適当ではありません。
全天88星座を東西南北、赤道、黄道などを考慮した配置にしています。
これは日々ランタンを並べるホテルスタッフの皆様には大変なお手間をおかけすることになりますが、数ヶ月経った今はスタッフの皆さんも配置や星座を覚えてきているようで、かなりのスピードアップができているとのことです。




私自身、小学生の時には天文ガイドという月刊誌を読み、小学5年生の時にずっと貯めていたお年玉を使ってビクセンの天体望遠鏡を買ったほどの宇宙好きですので、今回はこうしたこだわりを捨てるわけにはいきませんでした。

ちなみにこの望遠鏡は今もアトリエに置いてありますが、壊れています。今回レーザー加工でお世話になった工場のすぐそばにビクセンの本社を偶然見つけ、立ち寄ってまいりました。古い望遠鏡ですが修理可能だとお話を伺ったので、修理後、また当時のワクワクを感じたいです。


海風が強くあたる場所での設置ですので、ランタンの塗装もどぶ漬けで強固なもの、汚れを防ぐクリア塗装、倒れにくいようにステンレス製のウェイトをランタンの中に敷いたりと、様々工夫をしています。

写真はシーウッドホテル公式 HPより引用


水盤には水金地火木土天海の8惑星と、地球の衛星、月をイメージしてそれぞれのサイズや並びを設定しています。

惑星を模した球体上のライトは水盤の水底から立つように置く必要がありました。
水の中に長期間置くということで、金属部分はオールステンレス構造としていて、ウェイトもステンレスのオリジナル制作です。




樹脂製のウェイトでも良かったのですが、浅い水盤に樹脂ウェイトだけでは重量が十分確保できないと判断しました。

ステンレスの溶接は、今回のような薄板の場合は溶接の熱であっという間に歪みが出てしまい難しかったですが、助っ人Tさんの力もあり、自社作業で完結することができました。外注業者に見積もり依頼も行いましたが、とても予算に収まらなかったです。

そして電球部分や電気接続部分は水や湿気が混入しないよう、二重、三重に密閉する構造にしています。


土星はこだわっています。好きですから。

いかに強度を確保しつつ、正確な形を模せるかがポイントでしたが、
浮かんだ輪の固定方法は「カッシーニの間隙」を模した薄い2枚のステンレス板で挟みこれをベースにすることで解決できました。

輪の部分の樹脂板はカーポートの屋根などにも使われる素材とし、宮古島の強い日差しにも負けないはずです。

輪の色は3つのエリアに分け、マスキングをして慎重に半透明塗装を施しています。




 
運搬に関して、離島ゆえ通常のトラック輸送ができず、船便やカゴ台車のチャーターなども考えましたが、日数や、費用などを考え宅配便での発送となりました。

宅配便での配送は、梱包が命です。
割れ物が多く、かつ重量があるということで、今回は8mm厚のダンボールを各サイズで特注で制作し、オフシーズン時の保管にも対応できるようにしっかりと作りました。 

安くはないですが、特注は最高ですね。


宮古島は12月でも帽子が必須なほど暖かく、設営スタッフとして松本から来てくれたHくんは、霜焼けが治ったと喜んでいました。夏の避暑地もいいですが、冬の避寒地?に行くことも良いですよね。

暑いのも混んでいるのも苦手な私にとっては宮古島観光には冬が最適に思えます。



ホテル横のビーチはとても綺麗で、早起きしての毎朝の散歩はその1日を豊かにしてくれました。

お部屋もありがたいことにプール付きのヴィラハウスに宿泊させていただきました。
季節がら流石に夜のプールの水は冷たかったのですが、バスルームから直結のドアもあり湯船からの夜の屋外水風呂という感じで気持ちよかったです。

お部屋も一人では勿体無いくらい広いお部屋でしたが、夜風が心地よくプールサイドの椅子にいることも多かったです。

制作期間に余裕がない中、力を合わせてくれた制作スタッフの皆を想いながら、照明に照らされた水面を眺めていたことをよく覚えています。

余談ですが、11月のロケハン時の帰りの飛行機のなかで、図面を書き直したりと忙しくPCを叩いていたらANAのCAさんに飴をもらいました。ちょっとしたことなのですが、張り詰めている中のこういった心配りはとても嬉しいものでした。




今後、来年の天文台完成が待ち遠しいシーウッドホテルですが、宇宙LOVEの私にとってもぜひまた伺いたい場所です。みなさま、ありがとうございました。

シーウッドホテル公式HP
https://www.seawoodhotel.com/